
レクタブルの効果と副作用|潰瘍性大腸炎の当事者が3か月使った記録
レクタブルは、お尻から入れる「泡」のステロイドです(成分名:ブデソニド、注腸フォーム剤)。私も何度か使っています。
先に、この記事の結論から書いておきます。
この記事の結論
- 私にはよく効きました。プレドニンをやめたあと、直腸に残った炎症を抑えるのに使いました
- ただし長く続けると、排便後の腹痛が出て便が緩くなりました。先生の指示でやめたら、2日目には便が固まりました
- 数か月までは味方、それを超えると足を引っぱる——それが私の使い方の結論です
そして書いておきたいのが、続けるためのコツです。「入れたあと我慢できない」「そもそも挿すのが嫌」でつまずく人が多い薬なので、私がやっていたことも正直に書きます。
この記事では、どんな薬か → 私に起きたこと → 使う期間の目安 → 使い方のコツの順に書いていきます。
※ 私個人(潰瘍性大腸炎の当事者)の体験の記録です。医療者ではありません。効果には個人差があり、薬の判断は必ず主治医にご相談ください。自己判断で減らしたりやめたりしないでください。
レクタブルとは|届くのは、お尻から25cmくらいまで

潰瘍性大腸炎は直腸(お尻のすぐ内側)から炎症が始まる病気なので、全体が落ち着いても直腸にだけ炎症が残ることがよくあります。そこを狙って抑えるのがレクタブルです。
届く範囲は、お尻から平均25cmほど。薬の公式な説明書には「腸内で到達する範囲は概ねS状結腸部まで」とあります。それより奥の炎症には届きません。
そのぶん全身への負担は小さく、吸収された分の8〜9割はすぐ肝臓で分解される(体全体に回るのは入れた量の16%ほど)。ここが飲み薬のプレドニンとの違いです。
そして効果は、6週間で内視鏡の粘膜治癒率がこうなっています。
寛解した人は40.6%
寛解した人は16.1%
3人に1人の腸がきれいになる。ただし裏を返せば、3分の2の人は6週では届いていません。
位置づけは「ペンタサなどの5-ASA製剤で足りないときの、次の一手」。そして効いたら中止・漸減して維持療法に移る薬で、飲み続けて再燃を防ぐ役ではありません。
用法は1回1プッシュを1日2回(1本14回=7日分)。そして期間について、添付文書にはこう書かれています。
- 投与開始6週間を目安に、必要性を検討する(漫然と続けない)
- 臨床試験で12週を超えた投与は行われていない
つまり3か月より先は、そもそも調べられていない。ここが、あとで書く私の体験とちょうど重なります。
※ 出典:レクタブル2mg注腸フォーム14回 添付文書・インタビューフォーム、日本消化器病学会『IBD診療ガイドライン2020』。到達範囲には個人差が大きく(外国の試験で11〜40cm)、S状結腸より奥に届かなかった人も12人中5人いました。
レクタブルは私によく効いた。プレドニンを抜いたあとの受け皿

私がレクタブルを使ったのは、プレドニンをやめたあとです。
プレドニンは全身の炎症を消してくれますが、やめれば当然その効果もなくなります。そして私の場合、落ち着いても直腸からS状結腸あたりの炎症は残っていました。
そこを引き受けてもらうのがレクタブルでした。全身のステロイドを抜きながら、残った直腸の炎症だけは押さえておく。使い方としては、かなり理にかなっていたと思います。
そして——私にはよく効きました。
排便回数が落ち、便の状態も安定する。「これは合っているな」という手応えがはっきりありました。最初の数か月は、間違いなく味方でした。
レクタブルの副作用|排便後の腹痛と、やめて2日目に固まった便

出てきたのはこの2つです。
- 排便のあとに腹痛が出るようになった
- 便が、また緩くなってきた
厄介なのは、これが潰瘍性大腸炎の症状そのものと見分けがつかないことです。だから私は最初、「また炎症が戻ってきたのかな」と思っていました。薬のせいだとは、まったく思っていませんでした。
気づいたきっかけは、先生の言葉です。「レクタブルのせいかもしれない」。
そして先生の指示で、レクタブルをやめました。自分の判断でやめたわけではありません。
すると——2日目くらいから、便が固まりはじめて、排便回数も減ったんです。
これが何度かありました。「効いていた薬が、いつのまにか足を引っぱる側に回っていた」という感覚です。
腹痛・排便回数の増加は、副作用として書かれている
自分の思い込みかどうか確かめたくて、添付文書を読み直しました。
「腹痛」「排便回数増加」「直腸痛」「直腸灼熱感」は、副作用として記載がありました。(頻度は不明とされています)
※ 出典:レクタブル2mg注腸フォーム14回 添付文書 11.2。市販後の調査では、添付文書から予測できない副作用として「下痢」8件も報告されています(PMDA 再審査報告書 2025年6月)。ただしPMDAは「因果関係の評価が困難」として添付文書への追記はしていません。
「局所だから安心」でもない
もうひとつ。臨床試験では血中コルチゾール減少が41.1%の人に見られています。体が自分でステロイドを作る力が、抑えられていたということです。
これが困るのは、ふだんの生活ではなく、体が「いつもより多くのステロイド」を必要とする場面です。手術、事故、大きなケガ。そこで必要な量を出せないと、急性副腎不全(だるさ・吐き気・血圧の低下から、命に関わる状態まで)になりえます。メーカーの資料も「事故、手術等の強いストレスを誘因として急性副腎不全が惹起される可能性が否定できない」と書いています。
だから手術・入院のときは、「レクタブルを使っている(使っていた)」と必ず伝えてください。注腸フォームは「飲み薬じゃないから」と申告を忘れやすい薬です。
ただし、やめれば戻ります。6週間で下がったコルチゾールは、やめて14〜27日後には使う前の値に戻っていました。
※ 出典:レクタブル2mg注腸フォーム14回 添付文書(EAファーマ)、日本内分泌学会「副腎皮質機能低下症の診断と治療に関する指針」(2015年)。国の治療指針にも「ステロイドを含む製剤は、局所製剤であっても長期投与で副作用の可能性がある」とあります。
先生が言っていたのは、サイトメガロウイルスの炎症だった

このとき先生から聞いたのは、「ウイルスの炎症があって、レクタブルが悪い方向に働いていた」という説明でした。サイトメガロウイルスの話だったと記憶しています。
サイトメガロウイルスは、多くの人が子どものころに感染して、そのまま体の中に静かに潜んでいるウイルスです。ふだんは何もしません。ただステロイドなどで免疫の力が落ちると目を覚まし、腸を荒らすことがある——これが再活性化です。国の治療指針も「ステロイド抵抗例のなかに(中略)サイトメガロウイルス感染の合併による増悪例が存在する」とし、ヨーロッパのガイドラインはステロイドを再活性化の独立した予測因子としています(オッズ比 2.05)。
いちばん厄介なのは、症状が潰瘍性大腸炎の再燃とほとんど同じだということです。下痢・血便・腹痛・熱。国の治療指針は「内視鏡所見のみでサイトメガロウイルス感染の合併を診断することはできない」とまで書いていて、血液検査や、内視鏡でつまんだ組織の検査をしないと区別がつきません。
レクタブルでも、報告が3例あった
添付文書に、サイトメガロウイルスの記載はありません。ただ、PMDAの再審査報告書(発売後に集まった副作用をまとめた公式の文書)まで見に行くと、こう書かれていました。
「使用上の注意」から予測できない主な副作用 / 感染症および寄生虫症 … サイトメガロウイルス性腸炎 3例3件(3例とも重篤)
ただし同じ報告書は「情報不足により因果関係の評価が困難」と結論していて、添付文書への追記はしていません。2026年にはレクタブルを使っている間にサイトメガロウイルス腸炎が見つかった症例報告も出ましたが、その著者自身が「ブデソニドが直接ウイルスを再活性化させたかどうかは分からない」と書いています。
つまり「レクタブルのせいでサイトメガロウイルス腸炎になる」とは言えません。報告はあるが、因果関係は不明——それが今わかっていることです。
正直に書くと、私のケースは説明がつかない
ここまで調べて、ひとつ困ったことがあります。
「やめて2日目に便が固まった」を、サイトメガロウイルスでは説明できないんです。文献に書かれているサイトメガロウイルスの典型的なパターンは、「ステロイドを減らしていく途中で悪化する」という逆向きの動きです。さきほどの症例報告でも、レクタブルをやめただけでは良くならず、抗ウイルス薬を飲んではじめて改善しています。
一方でレクタブルの添付文書には、副作用として「腹痛」「排便回数増加」が載っています。だから私の体験は、「薬をやめたら、薬の副作用が消えた」という説明のほうが、資料とはよく合います。
当時の検査結果が手元にないので、実際に何が起きていたのかは分かりません。レクタブルの回数|基本は1日2回、終盤だけ夜1回にした

私も基本は用法どおり、1日2回で使っていました。(1回1プッシュ、1本14回=7日分)
夜1回にしていたのは終盤、減らしていく段階です。ステロイドを抜いていく流れなので、レクタブルも減らさないと意味がないと思っていました。先生に伝えたら、それでいいと言われています。
これは判断として悪くなかったと思いますが、データを見ると1回では明らかに落ちます。
倍近い差です。だから1回にするのは「効かせるため」ではなく「減らすため」と割り切ったほうがいいと思っています。
※ 出典:Naganuma M, et al. J Crohns Colitis. 2016;10(7):828-836.(国内第Ⅱ相試験)。なお「朝と夜」といった時刻の指定は、添付文書にも製薬会社の資料にもありません。タイミングは主治医の指示に従ってください。
レクタブルが我慢できない人へ|私がやっていたコツ

レクタブルを使っている人の中には、「入れたあと我慢できない」「そもそも挿すのが嫌」という人が少なくありません。私も最初は抵抗がありました。
私がやっていたのは、この3つです。効いた順に書きます。
1. 入れたあと、うつ伏せになる ★いちばんおすすめ
これがいちばん効きました。
入れたらすぐ、布団でうつ伏せになる。この体勢だと落ち着きます。そして1時間ほど経つと、出そうな気配自体がなくなるんです。
「我慢できない」で困っている人には、まずこれを試してほしいです。
※ 公式の手順に書かれているのは入れるときの姿勢(立ったまま、片足をイスや洋式トイレにのせて上半身を少し前に倒す)です。入れたあとの姿勢については、公式資料に記載がありません。だからうつ伏せは私のやり方で、勧められているわけでも禁じられているわけでもありません。気になる方は薬剤師に聞いてみてください。

2. 夜、寝る前に使う
これもかなりおすすめです。寝る前に使うと、そのまま眠気が来るので「出したい」という気持ちに引っぱられません。使ったらすぐうつ伏せになって、そのまま寝る体勢に入る。それだけで乗り切れます。
逆に日中だと、どうしても意識が向いてしまいます。
3. ローション(潤滑剤)を使う
これは「我慢」ではなく「挿すのが嫌」のほうを解決します。
挿入部に潤滑剤を塗ってから入れる。それだけで、痛みや抵抗感がほとんどなくなります。
そしてこれは、公式にちゃんと書かれていることです。手順1に「必要に応じてワセリンなどの潤滑剤を塗る」とあり、「本剤には潤滑剤は含まれておりません」と注記されています。製薬会社のQ&Aには、国内の治験では参加者全員にワセリンが配られていたとも書かれています。
すぐ試すなら
どのくらい我慢すればいいのか
調べて意外だったことがあります。
我慢する時間の指示は、公式資料のどこにも見つけられませんでした。添付文書、インタビューフォーム、製薬会社の患者向けページ、Q&A——全部見ましたが、保持時間の記載はありません。
逆に書かれていたのは、「泡なので腸の中に留まりやすく、投与後に肛門から漏れることが少ない」「立ったままでも投与できる」という製剤の特長でした。
私は「30分から1時間は我慢するもの」と思って使っていましたが、それがどこから来た情報なのかは分かりませんでした。
そのうえで体感として書いておくと、1時間くらい我慢できれば、そのあとは出そうな感じがなくなります。そこまでを目標にすると気が楽でした。指導を受けている方は、その指示に従ってください。
※ 公式の手順で「待つ」と決まっているのは2か所だけです。ヘッドを押したまま約2秒、指を離してから約15秒(この15秒で薬が入ります)。また、使う前に容器を手やワキの下で温めて、15秒振ってから使います。冷えていると薬が出にくいためです。
まとめ(私の場合)
- 届くのはお尻から平均25cm(S状結腸まで)。それより奥には届かない
- 効いたらやめる薬。添付文書は「6週間を目安に必要性を検討」、12週を超えた投与試験は存在しない
- 私はプレドニンを抜いたあとの受け皿として使い、最初の数か月はよく効いた
- でも2〜3か月目から排便後の腹痛と緩い便。先生の指示でやめたら2日目に便が固まった(何度かあった)
- 先生からは「ウイルスの炎症」と説明された。ただし何が起きていたかは、記録がないので分からない
- コツは①入れたあとうつ伏せ ②寝る前に使う ③ローションを使う。1時間くらい我慢できれば気配がなくなる
レクタブルの量や期間は、必ず主治医の指示に従ってください。自己判断で減らしたりやめたりしないでください。
長く持っていると味方から敵に変わる。でも必要な数か月には、確かに助けてもらった薬です。
薬以外で腸を持たせるために、やったこと

潰瘍性大腸炎の四毒抜き|具体的な方法と、私の体に現れた変化
四毒(小麦・砂糖・乳製品・植物油脂)とは何か、どこまで根拠があるのか、どう抜くのか。
四毒抜きの記録を見るよくある質問
Q. レクタブルはどこまで届くのですか?
A. 添付文書では「腸内で到達する範囲は概ねS状結腸部まで」とされ、外国の試験では平均25.4cm(幅は11〜40cm)でした。直腸とS状結腸の病変に使う薬で、それより奥の炎症には届きません。
Q. どのくらいの期間使うものですか?
A. 添付文書は「投与開始6週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないこと」としています。臨床試験では12週間を超えた投与は行われていません。私の場合も、数か月を超えて続けると調子が悪くなりました。
Q. 入れたあと、どのくらい我慢すればいいですか?
A. 我慢する時間の指示は、添付文書・製薬会社の患者向け資料のどこにも見つけられませんでした。むしろ「泡なので腸の中に留まりやすく、漏れにくい」ことが製剤の特長として書かれています。私の体感では、1時間くらい我慢できればそのあとは出そうな感じがなくなりました。指導を受けた場合はその指示に従ってください。
Q. 挿入が痛いのですが。
A. 公式の使い方に「必要に応じてワセリンなどの潤滑剤を塗る」と明記されています。国内の治験では参加者全員にワセリンが配られていました。薬には付いてこないので、自分で用意してください。
Q. 局所の薬だから全身の副作用は心配ないですか?
A. そうとは言えません。臨床試験では血中コルチゾール減少が41.1%の人に見られています(=体が自分でステロイドを作る力が抑えられている)。これが問題になるのは手術・事故・大きなケガのように体が多くのステロイドを必要とする場面で、必要な量を出せないと急性副腎不全になりえます。だから手術・入院のときは注腸フォームも必ず申告してください。ただし投与をやめれば、14〜27日後の検査で使う前の値に戻っていました。


