
腸内フローラ検査でわかること|潰瘍性大腸炎の私が受けた正直な感想
潰瘍性大腸炎の治療法を調べていたとき、便移植というものを知りました。健康な人の腸内細菌を、患者の腸に入れるという方法です。
驚いたのは、その成績でした。症状が良くなった人が5〜6割という報告が、いくつも出てきます。そしてこの治療は「潰瘍性大腸炎の人は腸内細菌の状態が悪い」という仮説の上に成り立っています。調べていくと、どの資料にもそう書いてありました。
では、私の腸内細菌はどうなっているのか。それを知るために受けたのが、腸内フローラ検査です。便を採って送ると、腸の中にどんな細菌がどのくらいいるかを調べてくれます。
この記事の結論
- 検査は自由診療。私が受けたところは5,500円でした
- 腸内フローラの状態が良くないことは、はっきり分かりました
- ただ、検査を受けたことで私の行動は何も変わりませんでした
この記事では、この検査で何がわかるのかという概要と、「意味ない」と言われている理由、そして受けたあとに私がどう動いたのかを書きます。
※ 私個人(潰瘍性大腸炎の当事者)の体験の記録です。医療者ではありません。検査や治療の判断は必ず主治医にご相談ください。処方されている薬を、サプリメントに置き換えたり自己判断で減らしたりしないでください。
※ 「5〜6割」は症状が良くなった人の割合です。落ち着いた状態まで至った人は3割ほどで、確実性の低い根拠とされています(Cochrane 2023)。便移植はまだ研究段階で、自己流でやるものではありません。
腸内フローラ検査とは|費用・調べ方と、どこまでわかるのか

腸内フローラ検査に、保険はききません。すべて自由診療です。
やることは便を採って送るだけです。しばらくすると、菌の名前と割合がずらっと並んだ結果表が返ってきます。「あなたのビフィズス菌は◯%、平均は◯%」という形で、平均との比較がついてくるのが特徴です。
私が受けようと思ったのは、便移植の仕組みを知ったからでした。あの治療が「腸内細菌の状態が悪い」という前提で組み立てられているなら、自分の腸内細菌がどうなっているのかを、一度は見ておきたい。そう思いました。
費用|私は5,500円でした
自由診療なので、医療機関と検査によって金額がまったく違います。
私が調べた範囲でよく見た価格帯
- 金額
- 5,000円台〜3万円くらい
私が受けたところ
- 金額
- 5,500円
※ 金額は私が受けた当時のものです。医療機関名は書きません。
この検査で、どこまでわかるのか
菌の名前には段階があります。「ビフィズス菌」は属、「ロンガム菌」は種、「BB536」のような番号がつくと株です。
結果表には、属も種も並んでいました。ただし、それぞれ確からしさが違います。
属(大きなくくり)
- 例
- ビフィズス菌
- この検査での確からしさ
- 比較的信頼できる
種
- 例
- ロンガム菌
- この検査での確からしさ
- 参考値。名前は出るが、当たっているとは限らない
株
- 例
- BB536
- この検査での確からしさ
- 分からない
株まで分からないのは、この検査のしくみのためです。細菌のDNAのうち 16S rRNA という遺伝子の一部分だけを読んで、データベースの中でいちばん近い配列を当てています。V4と呼ばれる部分を使った検証では、56%が種の特定に失敗したという報告があります。
そして、乳酸菌やビフィズス菌のサプリは、この「株」の単位で作られています。同じビフィズス菌でも、株が違えば別のものとして扱われます。パッケージに番号が書いてあるのは、そのためです。
腸内フローラ検査は意味ない?|同じ便を7社に送ったら、結果が割れました

この検査を調べると、「意味ない」という言葉が出てきます。何を指して「意味ない」なのか。そこを確かめました。
理由は2つに整理できました。
ひとつめ。同じ便を送っても、結果が一致しません
米国の国立標準技術研究所(NIST)が、同じ規格の便の検体を、7つの検査会社に3回ずつ送るという実験をしています。
見つかった菌のくくり(属)の数
- 結果
- 34〜906(会社によってこれだけ違う)
全部の検体に共通して出たくくり
- 結果
- 3つだけ
同じ会社の中での再現性
- 結果
- ある会社は1回目と2回目は「健康」、3回目は「不健康」と判定
論文はこう結論づけています。会社ごとのばらつきが、別人どうしの生物学的な差と同じくらいの大きさだった。
ふたつめ。「平均」と比べる、その平均に基準がありません
結果表には「平均」が載っています。でもその「平均」が何者なのかは、会社ごとにばらばらです。
NISTの論文は、ビフィズス菌を除けば、ある会社の平均値が別の会社の平均の範囲にすら入っていなかったと書いています。
そして2025年の国際的な合意文書——69人の専門家が手続きを踏んでまとめたもの——は、こうしています。
菌の割合の健康な人の基準範囲
- 合意した内容
- 示せるだけの情報が、まだない
- 賛成率
- 90%
腸内環境の乱れを点数にした指標
- 合意した内容
- 報告に含める根拠がない
- 賛成率
- 90%
検査した会社が結果をもとに治療を助言すること
- 合意した内容
- 非推奨
- 賛成率
- 98%
それでも、私の腸内フローラの状態は良くありませんでした
ここは正直に書いておきます。
上に書いたことは、「この結果表だけで、健康かどうかも、何を飲むべきかも決められない」という話です。それはそのとおりだと思います。
そのうえで、私のビフィズス菌は平均の約1/37でした。基準範囲がないことを承知しても、この数字を見て「自分は良い状態ではない」と受け取りました。資料の話ではなく、私の受け取り方です。数字は記事の後半に全部載せます。
※ 出典:Commun Biol 2026(米国NIST、同一検体を7社に3回ずつ)、Lancet Gastroenterol Hepatol 2025(69名の国際パネルの合意声明)。表示は相対的な%で、ある菌が減れば別の菌の%は自動的に上がります。
検査のあとに提案されたのは、6か月で28万円の治療でした

結果の説明を受けたあと、クリニックから治療の提案がありました。中身は3つに分かれていました。
①血液検査
- 内容
- 血液で「自分に合う菌」を特定する
- 金額
- 16,500円
②サプリの処方
- 内容
- ①で選ばれた菌を、続けて飲む
- 金額
- 月44,000円 × 最低6か月
③補助
- 内容
- 水素ガスの吸入、注腸移植の相談
- 金額
- —
検査そのものは5,500円でした。①と②を全部やると、28万円を超えます。
※ 金額と説明の内容は、私が説明を受けた直後に書き残したメモにもとづきます。領収書や見積書ではありません。医療機関名は書きません。
血液で「自分に合う菌」を選ぶ検査は、いい考えだと思いました

説明はこうでした。試験管の中で血液と菌をそれぞれ反応させて、いちばん炎症を抑えた菌を選ぶ。そうすれば、自分に合う菌が分かる。
サプリで飲む対象になるのは、6種類の菌です。乳酸菌が3種(パラカゼイ・ロイテリ・アシドフィルス)、ビフィズス菌が3種(ロンガム・ビフィダム・ブレーベ)。この6つの中から、自分に合うものを血液検査で絞り込む。そういう話でした。
1種類ずつ飲んで確かめていたら、いつまでかかるか分かりません。先に絞り込めるなら、そのほうが早い。そう思いました。
※ この手法は、研究で候補の菌を絞り込むときに使われているものでした。選んだ菌を人に飲ませて症状が良くなったことを示した試験は、見つけられませんでした(World J Gastroenterol 2007 ほか)。ただし私がやらなかった理由は、ここではありません。
私がやめた理由|1年半かけて行き着く先が「腸活」でした

私がサプリの処方と補助を受けなかった理由は、血液検査のあとにあります。絞り込んだあと、何をやることになるのか。そこが引き受けられませんでした。
1種類に数か月。6種類だと、1年半かかります
こういう説明を受けました。菌が定着するには時間がかかるので、最低でも6か月は続ける必要がある。
その説明自体を疑ってはいません。何千人と診てきた経験からの話でしょうし、私に判断できることではありません。
問題は、飲む対象が6種類あることでした。1種類を試して見極めるのに
- 数か月〜半年
飲む対象になる菌は
- 6種類
血液検査で絞り込まなければ
- 単純計算で1年半
血液検査で絞り込めば
- 半年。ただし28万円
16,500円の血液検査は、この1年半を半年に縮めるためのものです。そこは筋が通っています。
それでも、絞り込んだあとに半年。その半年でやることは、選ばれた乳酸菌とビフィズス菌を、毎日飲み続けることでした。
そこまでかけてやることが、「腸活」と同じでした
それは、世の中で「腸活」と呼ばれているものと同じではないか。ヨーグルトを食べましょう、乳酸菌を摂りましょう。健康な人にも当たり前に勧められている、そのレベルの話です。
それが潰瘍性大腸炎という病気に大きなインパクトを与える——そのイメージが、私にはどうしてもつきませんでした。
28万円と、半年。行き着く先がそこだとしたら、私はそこに賭けられませんでした。
当時は「同じ菌なら市販のサプリで安く買えるのでは」とも考えました。でも、安く買えたところで、やることは変わりません。
もうひとつ。水素と口の中の話も出てきました
提案は、腸だけで終わりませんでした。水素ガスの吸入、そして口の中の環境を整えるジェル。これも同時並行でやりましょう、という話になりました。
そこで、潰瘍性大腸炎を良くする話ではなく、体全体を良くする話になっていると感じました。
腸内フローラを整えること自体は、方向として合っていると思います。でも、それ以外の筋道には納得できませんでした。
あとで調べたことを書いておきます。
水素
- 調べて分かったこと
- 日本で行われた試験(活動期の潰瘍性大腸炎10名、1日4時間の吸入を8週間)は、途中の解析で改善が見られず中止されました。飲む水素水については、潰瘍性大腸炎を対象にしたヒトの試験が見つかりません
口の中
- 調べて分かったこと
- 口の細菌と腸の炎症を結びつけた有名な研究は、いずれもマウスの実験です。歯周病の治療で潰瘍性大腸炎が良くなったことを示したヒトの試験は、見つかりませんでした
あとから、根拠も探しました。提案された6種類について、潰瘍性大腸炎に効くという報告があるかを調べました。
ロイテリ菌
- 調べて分かったこと
- 飲んで効果を見た試験が見つかりません。あるのは子どもへの、肛門から入れる方法の小規模な試験だけ
ロンガム菌
- 調べて分かったこと
- 「14人中10人が落ち着いた」という数字はメーカーの宣伝ページのもの。元は比べる相手のいない2ページの短い報告。同じ研究グループが後に行った試験(56人)では63%対52%で差がつきませんでした
ブレーベ菌
- 調べて分かったこと
- 小規模な研究では良い結果が出ましたが、195人の試験で差がつかず、効果不足として中止
パラカゼイ菌
- 調べて分かったこと
- 18人。測ったのは血液中の物質だけで、症状の改善ではありません
アシドフィルス菌・ビフィダム菌
- 調べて分かったこと
- この菌だけを使った潰瘍性大腸炎の試験が見つかりません
日本の公式な治療指針にも、乳酸菌・ビフィズス菌製剤の記載はありませんでした。
ただ、これは決め手ではありません。やめた理由は、その前に書いたことです。この記事に商品名を書かないのも、そこに理由があります。
※ 出典:Cochrane 2020。症状を落ち着かせる場面では「確実性の低い根拠」があるものの、炎症を抑える薬との差はほとんどない可能性。保つ場面では効果不明。米国消化器病学会は2020年に「臨床試験の中でのみ使用することを推奨」としています。
※ 出典:Biomedicines 2025(水素ガス吸入、活動期の潰瘍性大腸炎10名。機器メーカーからの資金提供あり)、消費者庁 措置命令(令和3年3月30日)、国民生活センター 商品テスト(2016年12月15日)、Science 2017(口腔由来菌の研究。無菌マウスを用いた実験)。
ここから先は、実際に返ってきた結果表そのものと、そのあと自分で試そうとして止まったところを書きます。
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よくある質問
Q. 腸内フローラ検査とは何ですか?
A. 便を採って送ると、腸の中にどんな細菌がどのくらいの割合でいるかを調べてくれる検査です。細菌のDNAをまとめて読み取って、菌の名前と割合を推定します。保険はきかず自由診療です。
Q. 腸内フローラ検査の費用はいくらですか?
A. 自由診療なので医療機関や検査によって差があります。私が調べた範囲では5,000円台から3万円くらいでした。私が受けたところは5,500円です。
Q. この検査でどこまでわかりますか?
A. 結果表には菌の名前と割合が並びます。ただし「ビフィズス菌」のような大きなくくり(属)までは比較的しっかり分かる一方、「ロンガム菌」のような種の名前は参考値です。サプリの効き方を決める「株」(BB536のような番号がつく単位)までは分かりません。
Q. 腸内フローラ検査は意味ないのですか?
A. 「健康かどうかを判定する検査」としては、現時点では推奨されていません。米国の国立標準技術研究所(NIST)が同じ便を7社に3回ずつ送った実験では、見つかった菌のくくりの数が34〜906とばらつき、すべての検体に共通して出たものはわずか3つでした。同じ会社の中でも判定が割れています。
Q. 血液検査で「自分に合う菌」は分かりますか?
A. 血液の細胞と菌を試験管の中で反応させて、炎症に関わる物質の増減を見るという手法自体は実在します。ただしこの手法を報告した代表的な論文は、その用途を「マウスで試験する候補の菌を絞り込むための一次指標」と説明しています。この方法で選んだ菌を人に飲ませて症状が良くなったことを示した試験は、私が探した範囲では見つかりませんでした。
Q. 潰瘍性大腸炎にプロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌製剤)は効きますか?
A. 日本の公式な治療指針(厚生労働省の研究班『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針』令和7年度改訂版、日本消化器病学会『IBD診療ガイドライン2020』)には記載がありません。米国消化器病学会は2020年に「潰瘍性大腸炎では臨床試験の中でのみ使用することを推奨する」としています。※これは一般論で、個々の判断は主治医にご相談ください。